2冊目はこれ!『もっと知りたい台湾華語』

本教室で使用しているテキスト『もっと知りたい台湾華語』(張珮茹 著、白水社 刊)がとっても良い本なので、ここに紹介します。

『もっと知りたい台湾華語』(張珮茹 著、白水社 刊)

近年、日本で出版される台湾華語の教材はどんどん増えてきています。もっぱら台湾に関心があり、台湾の中国語を学びたいと思っている方にとっては嬉しいことですね。しかし、その多くは入門書と会話集で、入門段階を終えた人が次によりどころとする教材が見当たらないというお悩みもあるかと思います。

本書はカバーにもあるように、「入門段階を終えた人のための、くわしい学習書」としてこのような悩みを解消してくれる良書です。

本書の特筆すべき点は、語学教材であると同時に1冊の「台湾歳時記」になっているという点です。各課ごとに台湾の一年の行事がテーマとなっています。

日本人にもよく知られている台北101の年越しカウントダウン、ランタンフェスティバル、中秋節のみならず、台湾現代史を理解するために欠かせない228和平記念日、台湾ならではの台風休暇や伝統的な民俗である鬼月、また日本のものとは少しちがうバレンタインデーなど、時節ごとの台湾の風物を知ることができます。台湾の暮らしがより身近になり、これから留学や滞在を予定している方にとってはよい導入となること請け合いです。

著者の張珮茹先生は、台湾のご出身で、なおかつ中国の普通話における文法化という現象をテーマに東京大学で博士号を取得されています。ご自身のお話しになる台湾華語のみならず、中国の普通話にも日本語にもよく通じておられます。

本書を用いて学習を進めていくと、「中国語では」「台湾華語では」「普通話では」という3つの主語が使い分けられていることに気付きます。台湾華語と中国の普通話との違いに留意しつつ、両者に通ずる視点からも解説がなされています。

著者も「どこまでを台湾華語の表現として紹介して良いか、悩むところがありました」と書いているように、両者の違いは程度問題ではあり、場当たり的な説明はかえって混乱を招くことになりかねないのですが、筆者の明瞭で要を得た解説を読んだ読者は雲が晴れるような思いになるでしょう。

またこれは文法の解説についても同様で、本書の解説をしっかり読み込めば、現象の背後にあるしくみが浮かび上がってきます。この点では木村英樹先生の『中国語はじめの一歩』に通じるものを感じます。

レベル的には、同じ白水社から出ている樂大維先生の『今日からはじめる台湾華語』で中国語の概要を理解したあとでこの本を使うのが良いと思います。

本書を通して補語、アスペクト助辞、兼語文、連動文、現存文などを理解すれば初級文法は一通り完成するので、ここから先は教科書でのお勉強から離れて自由にご自分の興味を伸ばしていく事ができます。