呉明益『蝶道』

80年代の台北が舞台になった幻想的な短編集『歩道橋の魔術師』が日本でも話題になった呉明益さん。『自転車泥棒』は英国のブッカー賞にもノミネートされ、名実ともに台湾文学をけん引する作家です。

『蝶道』には台湾の蝶々と自然観察をめぐる12の随筆が収められています。文章のみならず、装丁や挿絵、写真などすべてが作者によるものです。先ごろ日本語版が出版された『複眼人』を読むと、フィクションの背後にこの作家の台湾という土地や自然環境への強い関心が示唆されますが、この随筆集には吳さんの自然と人とのかかわりへの考察が前面に押し出されます。



最初の「趁著有光」という作品は、台北郊外の士林官邸での流星蛺蝶との邂逅が語られます。レンブラントの捉えた光をめぐる考察から始まり、「じつはじぶん、色弱なんすよ」という衝撃の告白!

しかし、自分の見え方と他の人の見え方が違うのと同様に、感光器官の異なる虫たちもまた違った捉え方で光の世界を捉えている。

本文中に差し込まれる美しいモノクロの線描画もカラー写真もともに筆者の手によるものですが、上の告白を読んだ後にはこの対比がより効果的に響いてきます。

急いで読み進める類の作品ではないと思います。蝶々が出てくるたびにグーグルで実際の姿を確認したり、本を閉じて考えたり、寄り道しながら散策を楽しむように読んで行くのがおすすめです。

沖縄には「タイワン~」という生き物がたくさんいますね。タイワンカブト(サイカブト)、タイワンイナゴ(と保育園児たちは言ってるけど正式名称かな?)、タイワンハブもいますね。この本の写真にも、「あ、沖縄にもいるよ」という蝶々がけっこういますよ。

吳明益さんがnature writingについて語っています