認知科学の知見から、外国語の学び方について解説した本をご紹介します。

昨年12月の発行後、すぐに重版になった(めっちゃ売れてる)本で、那覇のジュンク堂でもしばらく品切れしていました。

タイトルの通り、具体例は英語学習なのですが、テーマは外国語の習得全般に通じるもので、中国語学習者にも有益です。

大事なところを1点挙げると、 

闇雲に単語帳を覚えたり、多読、多聴するのは、よしたほうがいい。

ということを筆者は言っています。

むしろ、それぞれの語が持っている概念、一緒に使われる語の特徴、類義語との棲み分け、日本語の「対訳」との違いを意識したほうが使える知識になる、

と言うのが主な内容です。

筆者は、日本語⇔外国語の表面的な対訳集を頭の中に構築しても使える知識にはならないということを強調します。

この本を読みながら思い浮かんだのは学生時代に聴講した西江雅之先生のお話でした。

早稲田の一文の名物講義、月曜4限の文化人類学の講義の中でのお話が今でも印象に残っています。

「片手に指は何本」と聞かれれば、当然答えは5本、

じゃあ、fingerは何本?

答えは4本。だって親指はthumbだから。fingerは残りの4本だ、と。

要するに、外国語の語彙を強化しようと思ったら、指=fingerのように、あたかも日本語と外国語に対応する語があるかのように考えていては駄目だということ。

つまり、日本語の「ゆび」と呼んでいる部分は、英語ではfingerとthumbで持ち場を分担しているんだということを理解しなければならない。つまり、単体でfingerの意味を考えるのではなく、他の語との意味のネットワークを意識しなければならない、ということです。

筆者は語彙力を高めるためにコーパスの利用を勧めます。

コーパスとは、実際に出現した用例のデータベースです。

中国語のコーパスとしては、台湾の中央研究院の中央研究院漢語平衡語料庫

や、北京大学のCCL语料库などが有名です。これらの使い方はまた改めてご紹介します。